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【UTMF 企画vol.6】Tomo’s Pitの1on1トレーニングセッション レース実践テクニック

昨晩(3月12日)UTMF2020の中止が発表されました。Facebookの中継をご覧になっていた方も多いと思います。この状況下でとても難しい判断だったことは誰しも想像に難くないでしょう。鏑木さんも1人の競技者であるからこそ「選手達を走らせてあげたい」という気持ちの伝わる会見と感じました。それを多くのトレイルランナーが見ていました。New-HALE「UTMF完走企画」に参加している2人も、コーチ陣も、皆さん同様に日々ハードな練習をこなし、そしてぐんぐん成長する姿と熱い姿勢を見てきただけにとても複雑な想いです。鏑木さんの言葉にあったように、それぞれに今年のUTMFを目指した理由や色んな想いがあることと思います。UTMF2020は一度切りです。でも!これまでの努力が無駄になるわけではありません。わたしたちは話し合い、今日から前を向き、次の目標レースや来年のUTMF2021を見据えて、進むことを決めました!本企画は2人が満面の笑みでフィニッシュしていたであろう2020年4月26日まで継続します。
これからも、UTMFを始めとするロングレースの完走のメソッドと2人のランナーの変化を皆さんと共有します!

(以下内容は2月に行われた練習に基づいて記事を作成しています)

トレーニング期を分けた練習メニュー

昨年12月末の約2ヶ月。たった4ヶ月しかないなかで、どこまでパフォーマンスアップができるのか。【UTMF 企画vol.2】で紹介したとおり、2ヶ月の間TOMOコーチから指定されるトレーニングを日々こなす2人。基本的に休足日は週に1日。それ以外はほぼ毎日走っていることになる。仕事の残業や出張、家族との予定、体調の変化。慌ただしい毎日のなかでなんとか練習時間をひねり出し、『UTMFまでの5ヶ月は人生をかけて頑張る期間!』というコーチの言葉を噛みしめながら奮闘しています。前回の小川壮太コーチのトレイル講習で会った2人は、なんだか活き活きとしていました。こんな練習をした、あのメニューがきつい、タイムトライアルがちょっと早くなった、など嬉しそう。Tomo’s pitのトレーニング構成をいまいちど見てみましょう。

Tomoさんのコーチングでは、トレーニング期を分けて指導を行います。ゴールから逆算して、スピード、登り強化、ロング走、テーパーリングといった風に時期を明確に分けて、練習メニューが構築されていきます。個人の能力やターゲットとするレースによって異なるものの、「トレーニング期を分ける」ということは非常に大切なメソッドです。これは多くのアスリート達が実践している手法でもあり、一般ランナーにありがちな色々な練習を同時期に行ってスピードも登りも距離耐性も「あれもこれも」と欲張って、結果どれも中途半端にしか向上することができないことを避けるのだといいます。強い身体づくりを念頭に、期分けごとにひとつの目的に集中して取り組むことで効果をより最大化することができます。

繰り返しになりますが本企画はたった4ヶ月半。すでに登り強化・ロング走の時期に入っています。ここでトレーニングの成果を最大化するために、1on1トレーニングセッションが行われました。今回は、レースまでに期間が短いこともあり、内容は「レースで必ず必要となる細かいテクニック」。これを覚えて、練習で繰り返し行うことで、あと2ヶ月で身体に叩き込むことが目的です。

 

と、その前に実践的にテーピングを施してから練習スタート

「IKUKOさんはまだ登りを走りなれていないことと、大きな筋肉を使うのが苦手なのでふくらはぎに疲労がたまりやすい傾向にありますね」というTOMOコーチの指摘どおり、膝下、とくにふくらはぎが張りやすいという。また「ロードを長く走るLSDで足裏に違和感が出ることがあります」(IKUKO)という悩みも。そこで、2つのテーピングを提案しました。まず、ふくらはぎに施すのは、Iテープ30cm(貼り方解説)。筋肉をサポートするだけでなく、筋膜にアプローチして筋肉の張りをやわらげるため、練習の時も練習後のリカバリーにも仕様します。そして、足裏の違和感については、様々なヒアリング内容から原因が「疲労によるアーチの崩れ」と考え、Xテープを2枚貼りました(貼り方解説)。これで足首のブレを防ぎます。

 

登りは“セブンイレブンの法則”で

UTMFのコースでは、林道やダート、峠登りがいくつも登場します。これをいかに攻略するかが鍵となる、とTOMOコーチは言います。TOMOさんメソッドの独特な表現が飛び出します。

「坂道や峠走は、“セブンイレブンの法則”です。7呼吸分歩き、11呼吸分走ります。歩数や秒数ではなく呼吸で数えてみてください。そして、7と11の進んだ距離が同じになるように意識して、7の時はパワーウォーク(早歩き)で歩きます。そうすると歩きと走りを繰り返しても同じくらいのスピードとタイムで進むことができます。歩きと走りという異なる動きを繰り返すことで足を温存するのですが、歩きでスピードが落ちないようにすることがポイントです」

TOMOコーチの歩きはとんでもなく速い。まるでパワーウォーク職人です。長い登り坂で全部を走りきれない時、歩きを織り交ぜるものの、ついだらだらと歩き、後半になるにつれ次第に歩きばかりになってしまう人もいます。最初から後半まで、効率よく“セブンイレブン”のテンポを続けられるように、練習で徹底的に身体に叩き込みましょう。

 

階段やトレイルは“腸腰筋”で登るべし!

次に、前回小川壮太コーチに教わった基礎をふまえて、登りの練習で意識するポイントを教わります。UTMFでは急登や木段の上りも登場します。IKUKOの癖は、「足首で蹴って登っている」こと。これは小川コーチからも指摘されていました。平地を走る時も、階段や登りでも足首でクイッと蹴ってしまうのです。

「登りでは、お尻にある大臀筋(だいでんきん)の動きも重要ですが、IKUKOさんに意識してほしいのは腸腰筋(ちょうようきん)です」

腸腰筋(ちょうようきん)とは、大腿骨と腰椎をつないでいる筋肉群の総称で、スポーツのパフォーマンスに重要であるとされています。これが、太腿を持ち上げる働きや股関節を立てる働きをするため、段差を繰り返すトレイルランニングにおいてもとても重要な筋肉なのです。

「登りは、太腿を挙げて下ろす繰り返しだと思ってください。脚を付け根から持ち上げる、この時に腸腰筋を使います。腿上げのイメージですね。腸腰筋は深いところにあるので、最初はなかなかうまく使えないかもしれません。意識する部分は実際に手で触って動きを確認しながら練習しましょう」

今までお尻も腸腰筋も意識したことなどなかったというIKUKO。TOMOコーチと繰り返し階段を往復してフォームチェック。なんとなくコツを掴めたかも?

 

下りは、“ウォーターライン” で流れるようなステップを

「まずは、下りはブレーキをかけすぎないように、足を差し込むようにしてできるだけ細かいステップを刻んでください」

山の下りでは、勢いよくバタバタと下ると衝撃が大きく、前腿や膝に負担がかかる。トップ選手のような筋肉を持ち合わせていれば別だけれど、初めて161kmも走り続けることになるのだから、いくら下りが得意でも大股でぶっ飛ばすよりもダメージを抑えながら走るほうが賢い。歩幅は小さく、接地時間は短く。

ビデオを撮影してもらって見てみると、TOMOコーチとの差は歴然。意識して走ったはずなのに、思った以上に大股で走っているのです。TOMOコーチのスピードの方が速いにも関わらず、ステップは細かい。何度繰り返しても「まだまだ!」「もっと細かくてもいいよ!」と言われ、下りのテクニックの難しさを痛感。

「体重のかけ方、重心位置にも注意しましょう。お尻をついて転ぶ時は、恐怖感で腰が引けていて重心位置が後ろすぎるのだと思います。接地した時に真っ直ぐに体重がかかるくらいがちょうどいいですね」

トレイルの一番上でTOMOさんが足を止めて、これから走る場所を指してこんな風に問います。

「どこを走りますか?」

身体の使い方を覚えたら、次にレースで下りを上手にこなすポイントは、ライン取り。適当に足を置くのではなく、どこに置くか。それもまた長い距離・長い時間走り続ける上で負荷を最小限に抑え、完走へ導くテクニックのひとつです。

「この場所から水をバサッと流したら、水はどこを流れていくでしょうか。走りながら数m先を常に見て、水が流れていきそうだなと思う場所をイメージして、ライン取りをしてください」

下りは、①細かいステップ ②重心位置 ③ライン取り を攻略すること。意識することがたくさんあって頭がこんがらがりそう。トレーニング期のステージが変わり、これからはトレイルでの練習が多くなっていきます。細かいテクニックは練習あるのみ!レースの時には意識しなくても身体に染みついた動きで走れるようになっているのが理想ですね。

「今日教えたことは細かいテクニックですが、長距離レースでは”チリツモ”なんです。ちょっとした負荷が「アリの一撃」※1になり、完走を脅かすかもしれません。トレーニングは量だけでなく質も大切です。スタートからフィニッシュまで、楽しく走り抜けられるようにテクニックを磨きましょう」(TOMOコーチ)

※1 もともと小さかったダメージが、徐々に広がって大きなダメージになっていく

次回は、夜の区間を攻略する“ナイト練”をレポートします。

 

今回使用したアイテム


New-HALE I-TAPE アイテープ 30cm 6枚入り 全11色

980円(税込1,078円)
“I型形状”の新ラインアップ。従来のNew-HALE® V-TAPEに加えて、全身のさまなざまな筋肉や関節に細かくアプローチできるロールテープを使用したテーピングメソッドをより簡単に、便利に活用いただけます。


New-HALE X-TAPE 6枚入り

1,500円(税込1,650円)
トレイルランニングやウルトラマラソンのトップアスリートが高頻度で使用する足首テーピング。捻挫予防だけでは無く、足首の横ブレを防ぐことで足首の反発力が維持され着地時の力が推進力に変わりパフォーマンスアップにつながります。足首角度を90度に保つことでフクラハギなど足の負荷を軽減し脚力のスタミナを温存します。

今回教えてくれたコーチ 井原知一(Tomo’s pit)

TOMOさんのコーチングを受けたい方はこちら→Tomo’s pit

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