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【UTMF 企画vol.5】161kmを確実に走り切るための基本テクニック編

この企画が始まってもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。228日、2人の元に運営事務局からメールが届きました。新型コロナウイルスの感染拡大により多くの大会が中止となるなかで、UTMFもまた「新型コロナウイルス(COVID-19)対策に伴う開催可否対応について」という発表がありました。3月16日に再度、大会実施可否及び開催の場合の運営方法の発表があるとされています。

当企画は開催の可能性がある限り、UTMFに挑戦する2人と多くのランナーを応援して行きたいと考えています。レースを走ることの希望は捨てず、努力に無駄なことはないと信じて、一緒に強くなりましょう!

さて!今回のテーマは、161kmを確実に走り切るための【超基本テクニック】です。これまで続けてきたTOMOコーチのオンラインコーチングはその名の通り『オンライン』でのトレーニングメニューの設計、アドバイス、パフォーマンスのコントロールです。そこに、前回の塙トレーナーのチェックとコンディショニング指導も加わりました。しかし、あくまでトレーニングは2人ともほぼ1人で行っています。

2人ともUTMFに出ることのできる条件を満たしているわけで、それなりのトレイルランニング経験があると言えます。しかし、『上手な山の走り方・歩き方』ができているかどうかはわかりません。UTMFエントリーに至るまで、なんとなく走り始め、次第に長い距離が走れるようになり、そのまま自己流で続けてきたという人も少なくないでしょう。

そこで今回は、UTMFに出走できるレベルの中上級者だからこそ、今改めて学ぶべきトレイルランニングの登り方と下り方を「La Mont ee Athlete Club」を主宰する小川壮太コーチに教わりました。

ランニング以外の動きからリズムや身体の使い方を確認するウォーミングアップ

「ではまず、ウォーミングアップから始めます。はい!これを使います!」
コーチが大きなカバンから出してきたのは、なんとサッカーボール。みんなで円になって、リフティング。脚だけでなく頭、肩、手も使っても良いというルール。1回バウンドもOK、一人1回弾いてもOK。その代わり、みんなで30回続くまで、終われない!

「イチ、ニ、さん、シ、あっ・・・!」
「しまった〜!」
「わっ、ごめん!」

なかなかうまく繋がらず、30回続きそうで続きません。壮太コーチ曰く、ランニングは前後の動きばかりになりがちで、横の動きや瞬発力が必要な動きが苦手なランナーが多いのだとか。ボールとの距離感を捉えること、ボールの軌道を見ながらも身体は前後左右に俊敏に動き、ボールを弾くための身体は機転を利かせて脚や頭、腕を出す。

「身体の柔らかさや使い方はランニング以外のスポーツから取り入れることができるので、定期的に他のスポーツを用いたトレーニングも差し込むと良いと思います」。

身体が温まったところで、次にコーチが持ち出したのはラダー。棒が等間隔ではしご状にロープで繋げられたトレーニング用具で、ロープのマス目を様々なステップで進んでいく練習方法です。サッカーや野球など様々なスポーツのトレーニングに取り入れられていて、瞬発力、バランス感覚、運動神経系を鍛えることができます。

順番に与えられるお題(ステップ)をみんなで一列になって順番に行います。ポイントは「マスに対してまっすぐ足を入れること」そして「視覚で確認したくなるけれど、出来るだけ前を向いて行うこと」。でも、なんだかみんな動きがちぐはぐ。ちょっとちょっとヒロキくん、右足と右手が同時に出ちゃっているよ!

「足をマスに入れることだけを考えていると、上半身が止まってしまいます。このトレーニングでのキモは、上半身と下半身の連動です。上体と腕振りをしっかり意識して行いましょう」

腕振りのポイントは、肘。コーチは、腕を振る時に肘から下だけを振っている人もいると指摘します。肘から下の振りだけでは、前に進む推進力にはなりません。「腕を振る際に肘の骨が、腰の位置に対してしっかり前後に移動しているか」を意識すると良いとのこと。また、股関節もしっかり動かすことで、上半身と下半身が連動するのです。

「レースでも、疲れてくるとだんだんとわけがわからなくなり、上半身が止まってしまいます。姿勢はエネルギー消費に大きく影響します。上体が崩れて猫背になり骨盤が前に出てしまうと、前腿を使ってしまう原因にもなります」。

下りのテクニカルなステップの練習として、体幹はキープしたまま、足元は左右の動きも加わった複雑なステップを踏む練習も行いました。ラダーは、頭で考えすぎるとうまくステップを踏むことができません。また、混乱すると慌てたり焦ったりしてどんどんドツボにハマって行きます。「お題に対していかにリラックスして挑めるか」ということもまた、レースへの向き合い方として必要な能力。

「1歩くらい間違えても失敗じゃない、気にしない。そこで止まってしまうのではなく、前に前に進み続けて、ゴールしたら勝ちなんです。こんなはずじゃなかったと思うのではなく、思考も身体も柔軟性を高めて、トライアンドエラーをしていきましょう!」

歳を重ねるごとに、いろんなことが苦手になっていきます。でも、そこであえてエラーが起こることをやってみる。走り続けることはエラーを修正していく力。『トレラン細胞を活性化させる』ラダートレーニング。週に1〜2回取り入れて見ましょう!

 

ロードの上りのイメージはゴリラ?-上半身と下半身の連動を利用する

UTMFは、トレイルレースでありながらも、山と山を繋ぐ際になんどもロードやダート区間が登場します。それはフラットな住宅街もあれば、長く続く上り坂、急勾配の峠下りまで様々。いかに効率的なフォームと走りで省エネに動くことができるかが鍵となります。まずはフォームチェックから。短い坂道で“レース中盤をイメージした上りと下り”を各々再現します。

IKUKO
登る際に、押し出すようにして膝下を蹴り出している。膝下ではなく大きな筋肉を使って登る。
HIROKI
軸はいいが、どの筋肉を使うかが曖昧。意識が薄いため、使う筋肉を意識して練習し、最終的には身体に染み付くようにする。

ロードの上りのポイントは2つ。
①股関節を引き込めているか
②対角線に身体のねじれの動きをうまく利用する
「手の位置は、腿の付け根に置く、後ろで組む、腰に置くなど人それぞれだと思いますが、例えば腰に固定すると股関節の動きも固定されがちです。腕を振った方が推進力になります。肩甲骨、背中の筋肉を動かして、脚を前に出すイメージを持つと良いと思います。イメージはゴリラですね。ゴリラの歩く姿を想像してみてください。上半身と下半身のねじれの連動をうまく利用して歩き、一歩一歩股関節をしっかり引き込むようにして上りましょう」。

 

ロード下り-接地位置と重心位置に注意

次に、下りの課題点のフィードバック。みんなで壮太コーチの撮ってくれた動画を見ながら説明を受けます。

IKUKO
膝下のスイングが大きい。ぺたんぺたんと走っている。接地位置と重心位置が違うため、接地した時に頭の位置が本来あるべき位置よりも後ろにあり後傾しているため、前腿を使いがち。接地した脚に重心が乗っていないのでスリップしやすく、お尻から転倒する。
HIROKI
接地位置と重心位置は良い。勢い良く下っているため、ダメージの最小化が重要。今の走り方では161kmはもたない。

ちなみに・・・TOMOさんは膝下がスイングして踵から接地するため、ヒールストライクに見えるものの、中足部で重心を受けていて、太ももの前側を使っている。もっとも体重がかかる時の重心位置が合っている。さすが!

接地した時に蹴った方の脚が後ろに残るのはNG。蹴り出した脚は接地する脚に寄せるといい。また、遠くに足を伸ばそうとするとヒールから入りがちなので、接地は斜度に対して平行に付くイメージで走るようにしましょう。

 

トレイル・階段の上りー省エネの極意を習得する

いよいよトレイル。でも、まず上りの極意は階段で学びます。階段で上りの身体の使い方を習得し、トレイルに応用していきます。上りのキーワードは、パワーポジション。

「ウェイトリフティングの選手を思い出してください。ウェイトをあげる時、どんな体勢になっているでしょうか。膝を曲げてお尻(股関節)を引き、姿勢はまっすぐにした状態。それがパワーポジションです」。

この『パワーポジション』を基本として、「股関節を引き込む」「上半身と下半身の連動を利用する」点はロードの上りと同様です。壮太コーチ曰く、上りで使うのは「お尻」。腰を振るのではなく、あくまで左右のお尻を使って脚を引き上げます。「自分のお尻の存在を感じたことがなかったかもしれない!」IKUKOからそんな言葉も飛び出すくらい、何度も何度も階段を登っては下り、お尻に意識を集中させます。パワーポジションが正しくできていれば、おのずとお尻に力が入るはず。

手の位置は、斜度や前傾角度によってより効率的な位置をその都度変えるのが良いのだそう。足の付け根あたりに“添える”形を基本として、左右にブレず直進性が出る腰に手を当てる形を使い分けてもOK。ただし、前傾の角度には注意。「猫背になったり上半身が倒れ込みすぎると胸が開かず、十分な呼吸ができません。お尻も使えず、無駄な筋肉を疲労させることになります。しんどいからといって、足元を見過ぎないようにも注意しましょう」。くれぐれも、姿勢は正して、パワーポジションを常にイメージしましょう。

 

トレイルの下りーいかに速く通過するより、いかに負担なく通過するか

「ロングレースは速く走ろうとするよりも、そこそこのスピードで速歩を続ける方が確実に完走できるものです。特に、下りは華麗にスピーディーに下る必要はないんです。いかに上手に走るかが重要です」

何日も走り続けることになるUTMF。脚のダメージは避けられません。特に下りは容赦無く脚に負担がかかります。上りよりも下の方が得意だという人もいるでしょう、下りが気持ちよくて走っちゃう!という人もいるでしょう。HIROKIはどちらかというと下りを飛ばしがち。でも、UTMFの下りは、いかに速くそこを通過するかということよりも、いかに負担なく通過して、次の上りで脚にダメージがないようにするかが大切です。


股関節、骨盤、足が全て一直線となり、二軸で走るのが基本。骨盤の先に2ほんのレールがあるイメージで、そのレール上に足を運びます。また、怖いからといって足元を覗き込むと地面からの距離が近くなり、逆にスピード感を感じやすくなります。視線は地面から遠い方が視界のなかの景色はスピード感が少なく、安定して走ることができるはずです。足元と走っていく数m先を交互に見ながら走るようにしましょう。

下りは何だか怖くてうまく走れないというIKUKO。ダイナミックに駆け下りるよりも、その場で足踏みをするフォームで下ればスピードも出ず怖くないはず。ブレーキをかけるよりも、接地の回数を増やすことでスピードをコントロールすることができます。

また、下のカーブのテクニックは「骨盤を進行方向に向ける」こと。レースでは、場所や環境によって路面は泥やザレなど様々です。下りのスピードにのったままカーブを曲がる時、ブレーキをかけようとするとスリップの原因になります。

「ブレーキをかけるのではなく、股関節を進行方向に向けることで自分が回るんです。そうすることで、カーブの外側の足でブレーキをかけて回るよりもスムーズにターンをすることができます」

 

ベーシックだけどこれが究極、レースになぞらえて練習し、身体に染み込ませる

コーチから基礎を教わった後は、トレイルの上り下り、木段、ロードなど様々な路面のある周回コースをグルグル。言われたことをそれぞれが反芻しながら、忘れないように身体に叩き込みます。

「今回教えた内容はすごくベーシックなことです。でも、究極のテクニックでもあります。この基本をいかにUTMF本番で長時間再現し続けることができるかが、完走に繋がります」

崩れることなくいかに基本に忠実な状態を続けることができるかがロングの醍醐味だと話すコーチ。「本番と同じだけの距離や時間の練習をするのは現実的ではありません。エイド間(一区間)の時間やシュチュエーションを目安に練習すると良いと思います」とのアドバイスを受けました。練習では、おおよそのエイド間の時間と同じくらいの時間を走り、補給やレイヤリングも含めて、今回学んだ走り方をなぞって自分に落とし込むことで、当日までに身体に染み込んでいくのが理想的。「一朝一夕ではできない」が、繰り返すことで確実に染み込んでいく。

「チャンスを、モノにしてください!」

壮太コーチの力強い言葉にパワーをもらい、また一歩完走に近付いた!はず!

 

今回教えてくれたコーチ 小川壮太(La Mont ee Athlete Club)

もっと詳しく壮太さんのコーチング受けたい方はコチラ → La Mont ee Athlete Club

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