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【UTMF 企画vol.7】暗闇を攻略する!ナイト練で見えてきた課題

UTMF完走(だったはず)企画、第7弾。まだまだ続きますよ!今回のテーマは「暗闇を攻略する」。距離を伸ばす過程で必ずやってくる、夜越え。トレイルランニングをやらない知り合いに聞かれたことはありませんか?

「えっ?夜は寝るの?走るの?」

夜も寝ずに走り続ける非日常感もまたトレイルランニングのロングレースにおける醍醐味のひとつと言えるでしょう。でも、夜が苦手という人も少なくありません。徹夜するだけでも大変だというのに、疲れた身体で走り続けなければなりません。しかもそこは不整地。眠気、見えにくいことによる恐怖感、寒さなど苦手要素は色々あるでしょう。集中するという人もいれば、精神的にダメージを受けやすい人もいるでしょう。

UTMFが行われる4月下旬の現地の日の出は5時前、日の入りは18時半頃。日の入り前から暗くなり始めることを考えると、10~12時間は暗闇の中。ボリュームゾーンのランナーなら、レース中に2回訪れます。20時間以上、つまりレース時間の半分近くが夜なのです。それだけに、夜間を攻略することは完走にグッと近付く重要な要素であると言えます。ナイト練で何に気を付け、どういう練習をすれば良いのかTomoコーチのレクチャーを受けました。

暗闇で差が付く、ギア選び

ヘッドライト&ウエストライト、第3のライトを奥の手に

「IKUKOさん、なんだかそのライト、ずいぶん暗くないですか・・・?」

初めてのTomoコーチとのナイト練。夜18時頃に高尾山口駅に集合し、準備をしたら早速出発。トレイルに入ったあたりでふと気付く。この日は、コーチ、メンバー2人、New-HALE竹谷さん、筆者(ライター中島)の5人で練習。一列で走っているけれど、IKUKOの周りだけなんだか暗い。

「それ、何ルーメンですか?」
「えっと・・・ずいぶん前に何かのレースでもらったものでよくわからないんですが、ずっとこれを使っていて・・・」

コーチがチェックすると、もしかすると100ルーメン以下じゃないかという暗さ。これまで夜を越えるレース経験が少なく、周囲に選手が多いボリュームゾーンをかなりゆっくり走っていたから気にならなかったらしい。試しに最新のヘッドライトと交換して走ってみると違いは歴然。これは大変。気付いてよかった!最近ではヘッドライトの性能はどんどん向上しています。後ろの選手が自分のライトよりも圧倒的に明るい場合、後ろからの光で足元に自分の影ができてしまい、ヘッドライトをしているのに前が良く見えないという現象が起こります。日頃ひとりでナイト練をしている時には問題がなかったのに、いざレースで周りのライトが自分のものより明るいことで、想像もしていなかった状況に陥るかもしれません。安い買い物ではないですが、周りと同等の明るさのライトを持つことが、夜間の走りやすさに繋がります。

「2つ目のライトは何を使ってる?」

UTMFをはじめとするロングレースでは、必携装備としてライト2つとそれぞれの予備バッテリーが指定されていることが多いでしょう。2つ目のライトをどんなものにするのか。それもまた戦略だと言います。Tomoコーチのおすすめはウエストライト。広角に照らしてくれるウエストライトを腰に付けることで、ハンドライトよりも揺れが少なく路面の凸凹も捉えやすくなります。暗い中ではスピードを出しにくい下りで特にその効果を発揮します。足元が見やすいだけでなく、明るさは眠気を防ぐ効果も。

「さらにもう1つ、濃霧時用のハンドライトもあるといいですね」

Tomoコーチはさらに小さなハンドライトを携行。ライトには黄色いフィルムを貼りつけてあります。白色光は、霧に乱反射して目の前が真っ白になり視界がわるくなるという現象があります。一方で、黄色い光は白い光よりも波長が長くて視認性が高く、遠くまで光が届くと言われています。過去のUTMFでも山中で濃霧が発生するということがしばしばありました。そんな時の奥の手も用意しておくというのです。

動きと気温差にすみやかに対応、体温調節を攻略する

次に重要となるのが、ウエア。この日はさほど寒くなかったものの、それでも夜は日中に比べてグッと冷え込みます。皆ロングスリーブの化繊シャツ。冷えると1枚羽織りたいけれど、防寒着では暑いし、レインウエアの蒸れも避けたい。Tomoコーチは、軽量でコンパクトなウィンドシェルを持つことが多いのだそう。走り続けていられれば良いですが、疲労や眠気で運動量が下がることもあるのが夜間。日が照っていないぶん、冷えはじめると一気に体温が奪われます。すぐ乾くだろう、動いていれば大丈夫、という様にたいしたことないと思っていた汗冷えが、大きなトラブルを招くことも。荷物の軽量化もパフォーマンスに影響しますが、体温調節はもっとパフォーマンスを左右します。時に死活問題。めんどくさがらずに、こまめな脱ぎ着で温度調節をしましょう。

補給で乗り切る!エネルギーとカフェイン摂取のタイミングに注意

ナイト練で指摘されたことは?という質問に対し、HIROKIの答えは「顔が眠そう」。・・・顔が眠そうとは!?真意はよくわかりませんが、実際にかなり眠気に悩まされたというHIROKI。仕事終わりで集合したために日付が変わる前あたりからだんだん眠くなり始め、集中力も散漫に。カフェインを摂るならば、その刺激により内臓トラブルを起こす人もいるため、タイミングと適量の見極めが大切です。また、夜間は補給が雑になり、エネルギーが不足して眠気に襲われることも。適当に食べるのではなく、補給計画を立てて摂取すること。どうしても眠い時にはカフェインの助けを借りることも視野に入れて準備をしましょう。

「どうしても我慢ならない眠気には、一瞬だけ、まぶたの裏側を見ると目が覚めたりもしますよ」(Tomoコーチ)

※Tomo語録:まぶたの裏側を見る・・・目を閉じるの意

ナイト練で意識する、走り方と練習法

登りも下りも「丁寧なライン取り」を。疲れた時こそ、下りを雑に走らない!

前回教わった“ウォーターライン”。水が流れていきそうだなと思う場所をイメージして、ライン取りをするテクニックです。

「夜はより丁寧に走るべきです。登りも下りもしっかりとライン取りを意識してください」

Tomoコーチからアドバイスを受けたのは、眠気でふらつくHIROKI。疲れてきた時ほど、丁寧に下る意識を持たなければ捻挫や転倒のリスクがあります。勢いよく下りがちなHIROKIですが、夜になると普段以上に雑になりがちだということが発覚。IKUKOはもともと下りが苦手なため、ゆっくりと下っているもののライトが暗いゆえに足元が見えづらくて余計に怖がってしまい、全くスピードが出ない。とにかくライトを買い替えたら、ライン取りを意識できるようしましょう!

「もう無理」から「もう一度復活する」練習

ナイト練は2部に分けて行われました。18時過ぎ~23時頃、コンビニ休憩を挟んで、0時頃から翌朝まで。総距離は約50km!行動時間は休憩含み、10時間にも及びました。まだ慣れていない2部練。しっかりと休憩を挟んで、もう一度出陣する設定です。実際にレースでもエイドで腰を据えて休み、再び動き出さなければならないシーンが度々あります。IKUKOはマイペースながらも、一部の終わりには「もうすでに脚がふらふらなのに朝までもつか心配です!」と言っていました。が、案外朝まで元気で乗り越えました!逆に、前半に気合いが入った走りでコーチに着いて走ったHIROKIは二部で眠気に悩まされる結果に。それぞれ特徴と課題が見えてきたものの、コーチとのナイト練という長時間行動を成し遂げて、いくらか自信が付いた様子。レースに近いシチュエーションに身を置いてみると、ウエアも、ライトも、補給も見直すべき部分がたくさん浮彫りになりました。レース前にすべての装備を実地で試しておく大切さを痛感した練習になりました。

「今までは、“もう無理と思ってからもう一回頑張って復活する練習”ができていなかったことに気付きました。当日は朝6時に起きて仕事してからだったのもあり、始まる前や一部練の時は本当に夜に50km走り続けられるのだろうかと不安でいっぱいでしたが、終わってみれば楽しかったし、二部練の時の方がむしろ元気に走り続けられる自分を発見してちょっとうれしかったです。12時すぎからはほぼ全く眠くならず、ひたすら山が綺麗だなぁと思いながら走ることができました」(IKUKO)

「眠気対策と丁寧な下りが課題です。眠くならないようにレース前の睡眠時間を確保することも必要ですね。これまで何となく勢いで乗り越えていた夜間走も、意識と工夫することでアドバンテージを得られそうだと感じました!」(HIROKI)

 

Tomo’s Pit オンラインコーチングの進捗

連載第2回で紹介した、Tomo’s Pitで採用しているTraining Peaks。トレーニングの負荷、疲労、調子をデータで管理することのできるサービスです。

ここで振り返りですが、これまで連載では、Tomo’s Pitのほか、塙コーチのコンディショニング、小川コーチのトレイルの基礎などを紹介してきました。2人はそれらの一時的なメニューだけではなく日々練習を重ねています。コーチが指定する練習や休息が、Training Peaksのカレンダーに登録されており、その指示通りに「毎日」を過ごしており、それが4月末までのトレーニングの土台となっています。

「パワートレーニング」という手法で、距離や時間などの「量」だけでなく、負荷・強度などの「質」や「調子」も指標として捉え、自分も持つパワーを向上させると共に、目指す本番に向けて目標となる数値にピークを合わせていくものです。その都度実力と疲労度を把握しながら、練習の量と強度を管理し、オーバーワークを防ぎます。そしてそれには、細かい指標がたくさんあり・・・自分で管理するにはなかなかマメさが必要であるところを、オンラインコーチングではコーチが全て管理して指示してくれるのです。今回は、2人の進捗を報告するにあたり、たくさんある指標のなかから4つの用語を簡単に紹介します。

FTP:ファンクショナル・スレッシュホールド・パワー。1時間持続できる最大パワー。オンラインコーチングのなかでFTPテストというものをそれぞれ行っています。

TSS:トレーニング・ストレス・スコア。トレーニングにより身体にかかった負荷。FTPを元に、トレーニング強度と時間で算出。低強度×長時間と高強度×短時間は同じTSS(身体にかかる負荷)になる。

CTL:長期間(直近約6週間)に渡り積み重ねてきたトレーニングの度合いを数値化したもの。フィットネスレベル、体力のようなもの。いきなりではなく、徐々に上がっていくことが理想。

TSB:トレーニング・ストレス・バランス。調子、疲労の蓄積程度を数値化したもの(CTLを上げるとTSBは下がるが下がりすぎるとオーバーワークのリスク、逆にTSBが常にプラスばかりだと練習不足)

Ikuko SHIGA

伸長率:ここ1ヶ月のCTLの成長はCTL41→65まで成長。4月末までにCTL77まで伸ばす予定。
練習量:月に40時間、距離220km
成功率:80%
伸びていることろ:ベースの走力がしっかりついてきました。
課題:ここから4月末までは登りの強化をしたい。

Hiroki TANAKA

伸長率:ここ1ヶ月のCTLの成長はCTL81→CTL94
練習量:月に40時間、距離330km
成功率:80%
伸びていることろ:ベースの走力がしっかりついてきました。
課題:登りの強化+下りの足への負担の少ない走り方とラインどり。
腰周りとハムが疲労で固くなり腰に違和感があるためリカバリー中。今週からラン再開の見込み。リカバリーを怠ると違和感から痛み、痛みから怪我に発展してしまため、強くなる=リカバリーすること。休む勇気、ケアを怠らない、リカバリーに時間を費やす。これを徹底していきましょう。

この企画も残すところあと1ヶ月、どのくらいまで2人が成長するのか。そして、UTMFが中止となった今、次に何を目標とするのか。次回は、実践で使えるテーピングの技を紹介します。

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